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エイリアン自身の考える「自閉症スペクトラム」

自閉症
スペクトラム
私の場合

(大変個人差が
大きいので
あくまで
私の場合です)

私の持つ「自閉症スペクトラム的なところ」には、物事へのこだわり、日課の反復、光や音、触感への過敏、目に映るものの細部を見てしまう、といったものがあり(そのくせ、会った人の顔はほとんど覚えられないところも)、普通に生活しているだけでも外界の刺激が強いため、疲れやすく、不安になりがちです。

不安が強い時は、ささいなことで苛立ちを感じたり、眠れなくなったりしてしまいます。また、注意力のフォーカスにも問題があるため、一つのことに没頭することはできても、複数のことを同時進行でこなすことは大変難しいです。(いろいろ一度にやろうとすると、情報過多でダウンしてしまうらしいのです)

子供の頃からずっとこうでしたが、私は一人っ子で、大人だけの家でとても静かな生活をしていたため、感覚の過敏さや騒音への反応が目立ちませんでした。ですので、子どもの頃は単にいろいろなことに敏感で、かんしゃくのきつい子どもだと思われていました。

それでも、家から一歩出ると、常に周囲の日本社会には非常な違和感を感じ続けました。うつ状態にもなりましたが、私はあまり薬が効かないため、とても苦しい思いをしました。ストレスから過食症が出たり、結婚してからはアルコール乱用がひどくなったりと、根本的な原因のよく分からない精神的不調にずっと悩まされてきました。

アルコール乱用を何とか克服した後、自分を見つめ直して人生を何とかしようと思ったとき、たくさんの心理学・精神医学・脳科学の本を読んで、手がかりを探しました。

そしてようやく、自分の生きにくさ、精神的不調を引き起こすほどの周囲の社会との違和感の原因が、実は脳の機能障害からくるもので、社会性の特徴、コミュニケーションの特徴、反復的・常動的な興味や関心のパターン、強いこだわりなどといった特徴を持つ「自閉症スペクトラム」(=ほぼ世の中に適応している状態から重度の自閉症にわたる、幅広いグレーゾーンのどこかに位置する状態)と呼ばれるものだとわかり、医師からの診断を受けることができました。30代半ばのことです。
「軽度」は
軽くない
私の場合「軽度」「高機能」の自閉症とはいっても、症状が「目立たない」「軽い部分も確かにあるが、能力に重大な穴ぼこがあいている部分もある」といった具合で、全体としてのハンディが軽いかというと、実感としては、決してそうではありません。

ではどれくらいのハンディなのかと言われると、ハンディのない状態というのを経験したことがないのでうまく説明できませんが、相方(結婚相手)を見ていると、明らかに私よりもリラックスして、私のようにささいなことで心を乱したり悩ましたりすることなく、日常生活や人間関係に対処しているのがわかります。

診断がつくまでは、私の周囲とズレた言動はすべて、「一人っ子のわがまま」「身勝手」「愛想が悪い」「独りよがり」「気が利かない」、などなど、周囲に対して、わざと、平気で迷惑をかけているといった風に見られ、何かにつけて非難されることばかりでした。

なので、診断がついた時は、とてもホッとして納得しました。自分が感じてきた周囲の社会との違和感は脳の機能障害からくるものだとわかり、人格に問題があるとか、性格の悪さといったものではない(わざと迷惑な言動をしていたわけではない)と知って、本当に救われた思いでした。

そして、診断によって自分のハンディ(弱点)を認識しやすくなったことで、トラブルを回避する工夫もできるようになり、対処のしかたは大きく前進したと思います。ハンディを持つことは、仕事や家庭生活がうまくいかないことの言い訳には、もちろんなりません。けれど、自分の陥りやすいパターンを知っていれば、ある程度注意して、人間関係の摩擦を防ぎ、失敗を防ぐことができます。
実際に私が
苦手なこと
脳の情報処理のしかたが大多数の人とは違うので、

「社会性の特徴」としては、
  • 相手の感情や、場の雰囲気が読めない。相手が気分を害していても気づかなかったり、自分だけ浮いてしまうことが多い。
  • 世の中の暗黙のルール(言葉で具体的に説明されないこと)がわかりづらいので、気づかずに失礼なことをしてしまったり、突飛な言動をしてしまう。
  • 人から見られているという自覚に乏しく、場に合わないファッションや寝癖のついた髪でも平気だったり、周囲の目を無視した行動をとってしまうことがある。
コミュニケーションの特徴としては、
  • 言葉以外の情報を読み取れない。つまり、しぐさ、身振り、表情、話し方といったことから、相手の伝えようとしている「言外の意味」を汲み取ることができない。
  • 言語能力そのものは低くないのに、話し言葉は流動的でつかみにくい。特に、3人以上のグループで会話するのが難しい。もともと話し言葉を聞くのが苦手なのに、人数が多くなると、話の流れがさらもつかみづらくなるため。
  • 電話は(特にかかってきた時は)まず、それ自体が自閉系にとって苦手な「予測のつかない事態」なので、驚いてしまう。また、聴覚が過敏なため、電話を通すと声が微妙にひずんで聞こえるので、(もともと話し言葉を聞くことが苦手なので)、さらに話の内容をつかみにくく、また、とっさに対応ができず、ものすごく辛い。
  • 書き言葉によるコミュニケーションの方が、話し言葉よりずっと楽(書いてある言葉は何度でも見返して確認できるから)なので、思ったことを的確に表現することができる。

想像力の特徴(反復的・常動的な興味・関心のパターン、こだわりなど)としては、
  • 相方(結婚相手)が不意に何かを決めて、その日の予定が急に変わったりすると、無性に不安がつのり、イライラしてしまう。
  • 毎日決まったことを、決まった時間にしないとひどく気持ちが悪い、そうせずにはいられない。毎日12時からエクササイズに行く、とか。
私の感覚
私の個性
感覚を受け取る能力は同じでも、鋭く感じ過ぎたり、異常に鈍かったりします。例えば、掃除機のキーンという音は聞くに堪えませんが、痛みには鈍感で、ケガをしていても気づかないことがあります。

どこに障害があるか、実際に会ってもほとんどわからないので、普通の人が簡単にできること(例えば、電話を受けながらメモをとる、といった同時進行など)さえできないことで、真面目さを疑われたり、人と目線があいにくいことで、目つきや態度が気味悪がられたり、視覚・聴覚の過敏と、二次障害で慢性的なうつがあるため、疲れやすく、ぐったりしていることが多いのを、怠けていると言われたりすることが、一番苦しいです。

こうしたことは、単なる脳の機能の問題からきているだけだからです。
ありのままで
受け入れ
られたい
私には、わざと「超個性的な人」や「不思議感覚の人」を演じるといった、パフォーマンス的な要素は全くありません。私のような人は、否応なしに世の中からズレているのであって、他のどういう形でも、自分自身として存在できないのです。世の中で失敗するたびに、自信を失うことをずっと繰り返してきました。私は今でも、何とかありのままの自分を認め、自分なりの自信を持ちたいと思いながら、なかなかうまくできずにいます。

私は自称エイリアンですが、地球生まれの日本育ちなので、自分のいまいる場所で、自分にできる方法で社会参加し、仕事をし、周囲とよりよくやっていけるようになりたい。なるべく周囲に迷惑をかけず、自閉症スペクトラムの特性も個性の一部ととらえて、なるべく人生を楽しみたいのです。自分自身も、もちろん努力を続けますが、社会の側にも、多様性を受け入れる方向に変化してくれることを期待したいです。
Back to TOP また、私のような人に限らず、いろいろな精神的・身体的なハンティを持つ人も、さまざまな特性や個性を持った人も、ありのままに受け入れられる社会、存在の多様性が認められる社会になってほしいと思っています。
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